ハチドリ・株式会社八鳥

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こころ

17歳の少女から見る世界

「城の崎にて」。この感覚はそうだ、あのタナトスが濃密に漂う志賀直哉の心境小説と同質なのだ。しかしあのようにメタファーやアレゴリーに満ちているわけではない。それでいて、ほんの少し曲がる路地や開ける扉を間違えれば「猫町」(萩原朔太郎)に迷い込みそうな危うさ。主人公はそれを予感しながらも、なんとか持ちこたえているように思える。 雨のそぼ降る海辺の町を行く少女。17歳の少女にとって、世界との交感はこれほどまでに多様多層なのだ。

小倉良之さん/高校教師